ポーカーで賞金、順位ポイント意識する「ICM」の考え方・戦略

ポーカーにおけるICMとは、賞金・賞品のかかったトーナメントにて非常に重要な考え方で、これを理解していないと意味がないほど。

トーナメント形式では順位を競いますが、何位からいくらもらえるのか、入賞ラインを把握して戦い方を変える必要がありますね。

これを知らずリングゲームやキャッシュゲームと同じ戦い方をしても、勝てないのがポーカーの難しいところです。

今回こちらでは賞金を獲得すること、それにより戦略がどう変わっていくのか、初心者にも分かりやすくお伝えしていきます。

ポーカーのICMとは?

ICM
ICMとは、インディペンデントチップモデル(INDEPENDENT-CHIP-MODEL)の略で、日本語では「独立したチップのモデル」という意味をもっています。

少し分かりにくいですが、簡単に言えば持っているチップの賞金価値を表した期待値といえば分かりやすいでしょうか。

キャッシュゲームやリングゲームの場合、スタックの価値というのはテーブルに置かれている数だけが正義です。

持っているスタックを増やすことだけを考えれば良いので、期待値がプラスであるアクションをし続けミスを減らすことだけを考えると良いです。

ハンドが入らない場合、強制参加費のSB,BBだけが1周ごとにかかるだけなので、そこまでの負担にはなりません。

ですがトーナメントはブラインドがどんどん上昇してきますし、参加人数が減っていくので、当然ですが戦い方は変わっていきます。

それだけでも戦略は変化しますが、問題はインマネ(入賞)が確定する人数や、あと少しでインマネする状況での戦い方が大きく変わるということ。

例えば1位~10位が同じ賞金だとすると、10位と11位の差は非常に大きく、自分よりショートスタックが複数人いる状況ではずっとフォールドし続ける、チップリーダーであればずっとオールインし続けることが正解まであるでしょう。

ただそんな簡単なことばかりではなく、基本的に10位から徐々に賞金アップしていくこともあり、今のスタックにどのくらいの価値がありそれを手放すべきかを誰しもが考えるわけですね。

どの程度の強いハンドが来た場合に、積極的にチップを獲得すべきかという指標を数値で表したのがICMの概要になります。

ICMを考慮して変わること

変える
このICMは例えばトナメ終盤のオールイン勝負した際、受けた場合とフォールドした場合の賞金期待値を比べてどちらが得か数学的な正しさを知ることが大きな使い方です。

例えばチップリーダーからのオールインで、「このハンド強いけど負けると賞金ないからコールしちゃダメじゃないか?」ということを数値で表したイメージですね。

ほとんどのトーナメント参加プレイヤーがICMを何となく理解しているでしょうし、ましてや11人残りで10人からインマネの状況ではバブルファクターと呼ばれ、安易に勝負出来ないことは誰しもが思うことです。

それを数値化してみることにより、大体の目安を知っておきましょうというのがICMの主な役割。

これは賞金額・スタック数・プレイヤー数で大きく変動する数値ですので、毎回計算することは非常に困難です。

ただ何となくでも知っておくことで、自分がオールインするプッシュレンジ、逆にオールインコールをオッズ計算以外でどうするのかを判断することが出来るでしょう。

特にコール側は、オッズコールといってオッズに合うから簡単にコールしてはいけない状況もあるのでしっかりと頭に入れておくこと。

オッズが合うのはあくまで目の前のスタックであり、見えない部分の賞金期待値が加わることにより、その必要勝率がズレてくるということが正しい認識です。

まずはコールできる条件を考える

状況

・トーナメント終盤残り3人
・賞金は1位$1000、2位$500、3位$0
・10BB持ちのBTNからオールイン
・BTNはエニハンでオールインとする
・SBがフォールドしてBBあなたのアクション

このような状況で、3位の賞金がない事が特殊な状況であり、もしこのオールインを受けることになれば、1位が近づくもしくは飛んで賞金0の2択の状況です。

人数と賞金、そしてスタック数を入力すると、それぞれプレイヤーの賞金期待値を出してくれるサイトで計算してみました。

ICM calculator

使い方は直感的でシンプル、プレイヤー人数を選択して、賞金額(ポイントや点数でもOK)を入力、現在のスタックを点数・BB表記でも問題なく入力することでそれぞれの賞金期待値が出ます。

このくらいのスタックだと誰が優勝してもおかしくないため、10BBが$555の期待値、8BBが$472の期待値がある状態ですね。

そこで本題のBTNから10BBオールインが入り、BBで受けるための条件、どうすればいいのかを上手く計算しています。

まずはオッズコール、純粋なスタックだけを比較してオッズに合うからコール出来る条件を考えてみました。

オッズコールの条件

・POTに2BB、相手から10BBオールイン
・コールするには8BB出し
・8÷(2+9+8)=必要勝率42%
・エニハンに42%以上勝てるハンドでコール

テキサスホールデムで2枚のハンド強さランキング!それぞれ勝率は?

条件がエニハンオールインに対してなので、勝率42%以上のハンドは結構あり、上の記事で纏めていますが、42%あたるハンドは「92s」であり半分以上のハンドで受けることがオッズコールとして成立します。

ではここから賞金を当てはめ、ICMを計算したオッズについて考えていきます。

異なる3つの状況で賞金期待値を出す

  • オールインで勝ったときの期待値
  • オールインで負けたときの期待値
  • フォールドした場合の期待値

ここから考慮すべきことはこの3つであり、ちょっと計算や数値が複雑になりますが、フォールドした場合よりオールインを受けた方の期待値がトータルでプラスになるのであれば受ける価値があるということ。

ただし、負けたときの損失も大きいので加味すると普通のオッズコールと変わってくるということ、一つずつ状況を考えてみましょう。

オールインで勝った期待値


まずはオールインで勝った場合、チップリーダーになり1人は飛びそうな状況になるので、期待値は大きく跳ね上がり約$826になりました。

かなり賞金期待値が高まった状態ですので、オールイン勝負に勝った見返りは大きいですね。

オールインで負けた期待値

続いてオールインを負けた場合の賞金期待値ですが、賞金は出ないので期待値は$0となります。

もしこれが3位でも賞金が出る場合、3位の賞金額がそのまま期待値となる計算ですね。

フォールドした期待値


最後にもしフォールドした場合の期待値ですが、自分のスタックは変わらず、BTNがスチールに成功し少し増やされた状況の変化ですね。

そのため少しだけ期待値のバランスも変わり、8BBの賞金期待値は$450になりました。

このアクションが始まる前には$472の期待値があった状態なので、2BB変わることで$22ほど期待値がマイナスになります。

当然チップを一番持っている人が優勝する可能性は高いのでスチールされる度に相手の賞金期待値は上がってくるでしょう。

通常のオッズコールとのズレを計算する

計算

  • 開始前:$472
  • フォールド$450
  • AI勝利:$826
  • AI敗北:$0
  • 勝率50%期待値:$413

ようやくICMを使った結論になりますが、このように出揃った期待値を比べてみて、勝率が50%だとAIの勝利・敗北を足して2で割ると期待値$413になることは分かりますか?

このことから、五分五分のオールイン勝負を受けるのであればフォールドした方が期待値が高い状態になったのです。

ですのでフォールドしたときの期待値より、オールイン勝負したときの期待値が高くなる勝率で初めて戦えるようになるわけですね。

フォールド$450÷(AI勝利$826+AI敗北$0)
=必要勝率0.54=54%

色々と書いていきましたが、オッズコールでは42%の必要勝率だったはずが、賞金期待値が絡むことにより約54%のエニハンに対する勝率が必要になってしまったのです。

これをハンドで表すと「J8s」以上、上位の60ハンド程でしか受けられないことになりました。

ICMをハンドレンジに落とし込む

戦略
賞金期待値が絡むことにより簡単にオールイン勝負してはいけないことがわかりました。

ただしここまで説明した前提として「エニハンでBTNがオールイン」した場合で、実践ではもっとオールインする側のレンジは固いはずですよね。

ですので、上位60ハンドでしか受けられないものが更に狭くなり、上位20ハンドくらいでしか戦えないほどになるのです。

この想定ハンドレンジを知るために、上で使っていた「ICMIZER」でも見ることは出来ますが、会員登録が必要なため今回は無料で見ることの出来るこちらのサイトを使ってみました。

Nash ICM Calculator

スタック・賞金・ブラインド等を入力して計算することで、お互いのオールインレンジ、コールレンジが分かります。

見にくくなってしまいましたが、今回の状況でBTNからは30%くらいのレンジでオールインすることが推奨、それに対するBBのコールは8.7%しかありません。

間違ってもKハイなどでは受けてはいけませんし、低めのスーコネなどでもオールイン勝負では弱いので推奨ハンドに入りません。

ただしこれがBTNからのオールインでなく、SBからの場合はお互いにプッシュレンジ、コールレンジが広がるイメージですね。

後ろに誰かいる場合はさらに狭く、そしてオールインしてきた人のポジション次第でもハンドレンジは変わりますが、基本は固くすることを意識。

逆に自分がオールインする側の場合では、ボタンでは30%・SBだと69.8%もあるので、弱いからフォールドではなく、しっかりプッシュしていきましょう。

相手がICMを知らない場合関係ない

知らない
ICMについて期待値の概念などをお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

かなり噛み砕いで書けたと思いますし、もし何かしら違う、分かりにく場合など、遠慮なくコメントやTwitterで教えてください。

最後にこのICMや自分からプッシュする際のパワーナンバーなどですが、基本的にはこれらを理解している人相手に通用すること。

例えばBTNからのAIレンジを広げたとしても、SBやBBのプレイヤーが順位意識がない状態だと、スナップでコールされる場合もあるのです。

スチールにもなりませんし、最悪賞金を落としてしまう可能性もあるため、ギリギリまで2BBオープンやリンプインを使うのも作戦の一つですね。

どのような環境で戦っているのか、そして後ろがどのようなプレイヤーが控えているのかを意識した上で戦いましょう。

数学的に正しいICMを駆使したとしても、それ通りが正義でないところがポーカーの面白い部分。

知った上で工夫する、エクスプロイトするのが上手な立ち回りだと思うので、もし分からない場合はゆっくり読み直してみてください。